◆日本人の "病院死" は世界水準の外?!

多くの人は、「病院で亡くなるのが当たり前」と思っています。でも、この常識が徐々に薄れてきているようです。現に、“病院死” は8割を割り、7割に近づいています。その反面、有料老人ホームの「施設死」が急激に増え、「自宅死」も少しづつですが増えています。

 

それでも病院死の割合は、日本はダントツに高く、欧米諸国では50%前後(フランス57%、イギリス49%、アメリカ43%、スウェーデン42%、オランダ29%)です。

 

でも病院死が高いのは決して、褒められた状況ではありません。というのも欧米の先進諸国では、医療や介護の充実度を測る基準は、「在宅サービスをきちんと受けられるか」ということです。あくまでも病院は “非日常の場” であって、「死ぬための安住の場」ではないと考えられているからです。

 

つまり、「病院死の割合が少なければ少ないほど、その国の医療・介護サービスが行き届いている」と言えるのです。

 

私達日本人だって、「最期は何処で亡くなりたいですか?」というアンケート調査では、6割ほどが「自宅で!」と答えています。“白い天井” を見上げながら、チューブや人工呼吸器につながれて亡くなるなんて、「真っ平ごめんだ」と心の底で思っているのです。

 

先進国が重要視している「Well-being」(健康で幸福な度合い)を考えると、最期まで、「自宅」で、あるいは「自宅に近い環境の施設」で、医療や誰かの介助がなければ暮らせないのではなく、自力で日常生活を送りながら、平穏に往生したいものです。

 

m6203.jpg

自宅や施設で亡くなる割合が増えているとはいえ、病院死はまだ、7割を超えています。なぜ、世界のスタンダードからかけ離れた、このような状況になってしまったのでしょうか?

 

どうやらその原因は、2つあるようです。

 

 1.国民がより便利でスマートな暮らし方を追求したから

統計をとり始めた1951年(昭和26年)は、自宅死82.5%、病院死11.7%でした。その後、自宅死がどんどん減り、その分、病院死がどんどん増え、1976年(昭和51年)に逆転。病院死の急上昇は、経済の急上昇と合致します。洗濯機・冷蔵庫・クーラー・マイカー、レトルト食品・ファーストフードがあっという間に普及し、生活が一気に豊かで便利になった。 

 

核家族化が進み、三世代同居なんてマイナーなケースに。そもそも老人と暮らすのは煩わしいし、家庭内で手を掛けたくない。より便利なサービスを求めるようになり、そうなると、病院に任せるのが良いし、それがスマートで豊かな暮らし方だという風潮が広まった。

 

豊かで便利な生活をするようになって、かつて “贅沢病” と呼ばれていた高血糖・高脂血・高血圧といった病気が急激に増えた。これらの病気は、自らの生活習慣が引き起こすので、“生活習慣病” と命名された。

 

 2.政府が大判振る舞いをして老人を甘やかしたから
経済はイケイケどんどん、豊富な財源を背景に、老人医療費を無償化する政策を打ち出した。東京都の美濃部知事が言い出しっぺで実施、それに大阪府の黒田知事が追随。さらに1973年に、田中首相の指図で国全体の政策となり、それから10年続いた。

 

さらに1県1医大構想で、医者の数は倍増。国を挙げて “医療振興” をしたので、国民の間で「病院に行けば医者が何とかしてくれる」という “医療信仰” が広まった。日本人は世界一、医者好きな国民となり、年間一人当たり平均14回、先進国平均の2倍以上も、病院に行くようになった。

 

病院に行けば、検査して異常が見つかれば薬が処方される。薬のほとんどは症状を一時的に抑える“対症療法薬”で、根本治療するのは難しいのだが、飲み続けるしかないと言われる。こうして高血糖2000万人、高脂血3000万人、高血圧4000万人…と、すごい数の患者が病院に通い続ける。

 

世界からは、「日本人は無宗教と言うけど、立派な“医療教”の信者じゃないか。しかも熱烈な」と揶揄され、「日本人の薬好きとポリファーマシーも、もういい加減にやめないと駄目だよ」と指摘されています。

 

ポリファーマシーは、「Poly」(多くの)+「Pharmacy」(薬)のことで、「多くの種類の薬を飲み過ぎて、副作用や後遺症のリスクを自ら作っている」という指摘です。

 

厚労省の調査でも、5種類以上の薬を飲んでいる人の割合は、65歳以上で30%、75歳以上で40%。“ふらつき” “転倒” “物忘れ” といった副作用で、「寝たきりや認知症のリスクを高める」と警鐘を鳴らしています。

 

それでも、日本人が薬を多く飲むのはグンを抜いていて、現に、調剤薬局はコンビニより多く、5万9000店と世界ダントツ1位なのです。

 

5月1日から始まる令和は、AI(人工知能)に代表される「IT化」と、ヒト・モノ・カネ・情報が世界中を駆け巡る「グローバル化」が本格化する時代ですが、この分野で、平成の間に、世界の水準から大きく遅れをとってしまっています。

 

“病院死” が依然として多いのも、“医療教” や “ポリファーマシー” を指摘されるのも、同様に、世界の趨勢から遅れをとっています。こういった事実を知って、いち早く行動して、名誉挽回しなければなりません。