「社員の健康支援」と「健康会計」2
― 後段 ―
●「健康会計」という新しい考え方
経済産業省と厚生労働省は、企業による社員の健康管理情報の開示を求める「健康会計」の制度化を検討しています。
この「健康会計」では、定期健診など健康管理への投資とその効果を定量的に把握できるようにするとともに、優良企業を認定する制度も作ることになっています。企業に社員への予防医療の徹底を促し、上昇し続ける医療費を抑制しようというものです。これは世界でも初めての試みといわれます。
また、「健康会計」では、社員の健康維持のための費用を、将来の病気の発症(=会社のリスク)を抑えるための「投資」と位置づけ、社員の健康増進による経済効果を示し、一般投資家への情報開示にも繋げるということです。
「健康会計」は、企業にとっては
(1)労働生産性の向上
(2)労災リスクの低減
(3)医療費負担の適性化
(4)ステークホルダー(企業の利害関係者)に対する説明責任の充実
(5)社会全体の「健康資本」増大への寄与
などのメリットがあります。
一方、社員にとっては
(1)個人の健康度が向上
(2)業務の生産性が向上
(3)職場に対する満足度が上昇
といったメリットがあります。
しかし、見方を変えれば、「健康会計」という制度を作らなければならないほど、私たち日本人は、世界に冠たる「国民皆保険制度」に安住しているうちに、健康に対して無頓着になってしまったともいえるのです。
この「国民皆保険制度」が実現したのは1961年。患者の窓口負担に加えて、保険料と税金を財源として運営される“共助”と“公助”の仕組みです。保険証1枚でいつでも、どこでも、誰でも、一定割合の低価格で医療機関にかかることが出来るという利便性が、50年経過する間に、逆にあだになって、「負担しても3割で済む」「薬を飲めばいい」「病院へ行けば何とかしてくれる」という安易な気持ちや誤った思い込みが蔓延してしまったと思われます。
一方、“自助”(自主独立、自己責任、自己負担)の精神を重んじるアメリカでは、65歳以上が対象のメディケイドが制度化されてはいますが、全国民をカバーする公的保険はありませんでした。
国民の多くは民間保険に入っていますが、保険料を負担出来ない人たちは無保険者となります。その数は約4600万人といわれ、オバマ大統領の主導で2010年3月に成立した医療保険制度改革法により、今後10年で3200万人が保険に加入出来る見込みのようです。
ところが、アメリカには根強い反対勢力が存在します。医療保険を取り扱う民間保険会社、医師会など医療関係者、製薬会社の3者は、国民皆保険制度より現行制度の方が儲かるので揃って反対です。また、富裕層は大金を払っても今の方が「高度医療」を受けられること、及び、増税と負担が見込まれることで反対です。
上記のように悩ましい状況ではありますが、医療費の高いアメリカでは、富裕層以外の一般ピープルは風邪をひいても簡単に医者にかかるわけにはいかないので、一生懸命に予防せざるを得ない環境の中で生活してきたのも事実です。
「病気になってから安易に医者にかかる日本人」と「病気をしないように予防に努めるアメリカ人」―どちからが健全でしょうか?答えはいうまでもないと思いませんか。
私たち、「3助」(“共助”と“公助”と“自助”)のうちの“自助”が今まで以上に強く求められる時代に生きています。そのため、ますます病気予防の重要性が増します。
体が資本です。「健康こそ人生最大の財産」と言い切っても過言ではないでしょう。「病気を寄せ付けない体づくり」に真剣に取り組まなければなりません。

