◆ポスト平成時代の健康戦略(その5)

誰もが100歳まで生きることが当たり前となる時代に備え、産経新聞社が立ち上げた「100歳時代プロジェクト」のシンポジウム『100歳時代大学』(テーマ:100年生き抜く知恵と心構え)が3月5日、大手町サンケイプラザで開かれ、出席しました。

 

元滋賀県知事で健康・福祉総研の國松善次理事長(82歳)が基調講演。題名は「人生100歳時代のライフプラン」で、とても示唆に富んだ内容だったので、その骨子を記します。

 

1.人生100歳時代、65歳からの「下山の教育」が必要だ
65歳からの下り坂が30年もあるのに、その覚悟と備えをしていない。「下り坂の生き方」について学ぶ必要があり、65歳からの義務教育として『100歳時代大学』を提唱している。

 

2.人生はドラマ、ドラマの良し悪しは「最後の一幕」で決まる
人生はお一人様「1回限りのドラマ」。生涯を通じて “主役” を演じ、シナリオを描く “脚本家” と演出する “監督” をも兼ねる。この人生ドラマは「最後の一幕」が肝心だ。

 

3.最後の一幕、「少数の成功」と「多数の失敗」というのが現実だ
成功例はPPK(ピンピンコロリ)、失敗例はN・N・K(認知症・寝たきり・孤独)のいずれか。PPKを目指すには、最後まで生き抜ける健康観やライフプランを持つ必要がある。

 

國松理事長に触発され、日本人の「死に方」の実態を調べました。それが下の図です。
 

m61333.jpg m61444.jpg

「原因の内在性」と「死への意図の不在」が色濃く重なる “病気” が死亡原因の8割で、このほとんどがN(認知症)とN(寝たきり)を含む「生活習慣病」です。名前が示すように、自分の「生活習慣」が引き起こす「病」であり、原因が内在しているのです。

 

一方の老衰は1割弱、PPKは10人に1人です。つまり、國松理事長が言いたかったのは、「最後の一幕は “ハッピーエンド”(PPK)という成功例を残すのが中高年世代の責務。これこそが100歳社会において一番の貢献になる」ということだと思うのです。

 

 基調講演に続き、前慶應義塾塾長で日本私立学校振興・共済事業団の清家篤理事長(64歳)、IT企業GNEXの三上洋一郎社長(21歳)、元フジテレビアナウンサーの菊間千乃弁護士(47歳)も加わったパネルディスカッションでは、100歳時代の人生戦略について議論。

 

議論のまとめとして、清家先生が提言された内容は以下の通りです。

 

生命寿命、つまり「生きる期間」は大きく伸びたが、健康寿命がそれに追い付いていない。この健康寿命を伸ばすことが職業寿命を伸ばし、社会保障制度を維持させる。そのためには中高年世代が “自助” の精神を持ち、 “公助” に依存しないことが必要だ。

具体的には、病気を防いで医療保険制度の負担を軽くする。できるだけ長く働いて年金制度の負担を軽くする。若者世代にツケを回さないという社会の実現が急務だ。

 

今回のシンポジウムに出席して実感したことは、次の三つです。

 

m61666.jpg

いかがでしょうか。すこしでも参考になれば幸いです。

◆ポスト平成時代の健康戦略(その4)

年齢よりも「若く見える人」と「老けて見える人」がいます。なぜでしょうか?

 

血糖値についての第一人者、牧田善二・医学博士の著書『眠れなくなるほど面白い糖質の話』(2018年12月発行)にも記載されていますが、老けさせるものとして、これまで注目されてきたのは「酸化」でした。

 

皮をむいたリンゴが茶色く変色するのと同じように、酸素によって細胞が錆びたような状態になってしまう現象です。体に取り入れた酸素の2から3%が活性酸素に変わって、体に害を与えるのです。

 

しかし最新の研究で、“糖化” が酸化より遥かに悪影響を及ぼすことが解明されています。そして、糖化で大量に発生する悪玉物質が、アンチエイジング医学で注目されています。それが “AGE”(Advanced Glyion End Products、終末糖化産物) です。

 

AGEは体内のあちらこちらにたまり、「むくみ、シワ・シミ、くすみ」といった肌のトラブルだけでなく、「MCI」「動脈硬化」「骨粗しょう症・関節症」「がん」という、年齢が上がると共に罹りやすくなる恐ろしい病気もAGEが一番の原因なのです。(ちなみに牧田先生は「AGE牧田クリニック」という名前で銀座に開院し、それから20万人以上の患者を診ています)

 

2人に1人が「がん」、3人に1人が「MCI・認知症」になるという現代社会の姿。この最大の原因は “糖化” なのです。つまり、糖質を多くとってしまう私達現代人にとって糖化こそが “最大の敵” なのです。

 

m60111.jpg

そして、AGEは「細胞」にも影響を及ぼすことが分かっています。

 

体の中では毎日、数千億個の細胞が死んで新たな細胞が作られているのですが、この新しい細胞はDNAに書き込まれた遺伝情報を基に作られます。ところが、DNAにAGEがたまると、コピーエラーを起こして、異常細胞(がん細胞)が生まれてしまいます。

 

免疫機能が働けば、がん細胞を退治してくれるのですが、“糖化” で免疫力が低下していればそうはいきません。それに、がん細胞のエサは “糖” だけなのです。

 

ここで知っておくべきなのは、「見た目が老けている人は、体の中も老けている」ということです。つまり、「最近老けてきた」「たるみ、シミ・シワ、くすみが出てきた」ということは、脳や血管、骨・関節や細胞の老化も進行しているということなのです。

 

でも、皮膚の細胞は1か月で入れ替わります。つまり、1か月もあれば新陳代謝されるのだから、高価なホワイトニング化粧品を使うのもいいでしょうが、その前に、“糖化” を防ぐことが大事なのです。

 

そして血管も、骨や臓器も、脳だって、体じゅうの細胞は1年以内に新陳代謝されます。しかし40代から目立って、新陳代謝力=「体と脳の耐久力」は低下するので、30代までよりも、より一層、糖化を防ぐことが大切なのです。

 

p602.jpg

「見た目が老けているのに、体の中だけは健康で若々しい」ということはあり得ませんが、「見た目が若々しければ、体の中も健康で若々しい」ということはあり得るのです。

 

◆ポスト平成時代の健康戦略(その3)

「今日も一日頑張ろう」―― 保険関係の企業に勤める30代半ばのA氏は、毎朝、会社が入っているビルに設置された自販機で缶コーヒーを買います。それを持って自席につき、飲みながらパソコンを立ち上げメールチェック。こうして一日を始めるのが日課です。

 

ところが、糖尿病専門医として38年間、20万人以上のビジネスパーソンを診てきた牧田善二医師はこのように言っています。

 

「缶コーヒーは悪魔の飲み物。口にするのは絶対に避けたほうがいい」「カフェで売られている入れたてのコーヒーとは全くの別物。砂糖の塊が解けた液体に過ぎず、健康に悪いことはあってもi良いことなど1つもありません」

 

「缶コーヒーに限りません。自販機やコンビニで売られている身近な飲料は、大量の糖質を含んでいるものが多いのです。コーラなどの甘い清涼飲料水に糖質が多いのは分かっているでしょうが、注意が必要なのはいかにも健康に良さそうな商品です」

 

m583.jpg

■「本来、健康な人間の体内には約4.5リットルの血液があり、その中の血糖値は空腹時90mg/dlです。つまり、血液中には4グラム前後の糖が存在します。それだけあれば十分だから、この数値なのです」

「では、4グラムでいいところに、缶コーヒーなどを飲んで、いきなり大量の糖質が入ってきたらどうでしょう。しかも一気に吸収される液体の糖質です。人間の体が全く想定していなかったとんでもない事態が起きるのです」

 

 この、とんでもない事態というのが下の図です。

 

m590100.jpg

 ■「液体の糖質は口にしてすぐに血糖値が上がり始め、30分後にはピークに達します。缶コーヒーを1本飲めば、高血糖でない健康な人でも30分後には血糖値が140くらいまで急上昇します。これを血糖値スパイクと呼びます」

「血糖値スパイクが起きると、今度はジェットコースターのように一気に下降して、血糖値が低過ぎる状態になります。

 

「血糖値がぐんと上がると、セロトニンやドーパミンといった “脳内物質” が分泌されて、ハイな気分になります。だから、仕事の前に気合いを入れるには缶コーヒーがピッタリだと誤解してしまうわけです。このハイな気分になるところを至福点と言います」

「一方で、血糖値が上がったことを察知した体は、それを下げるために慌てて膵臓から大量のインスリンというホルモンを放出します。そして血糖値が急激に下がります。

 

「血糖値が大きく下がると、ハイな気分から一転、イライラしたり、吐き気や眠気に襲われたりと不快な症状が出ます。するとあのハイな気分になりたいと、血糖値を上げる糖質が欲しくなり、同じことを繰り返してしまうのです」

「これは、《糖質中毒》という脳がおかしくなってしまった非常に深刻な症状です。しかし、中毒に陥っている本人には、その自覚が全くありません」

 

このように牧田医師は、「ビジネスパーソンの多くが知らず知らずのうちに《糖質中毒》になっていて、そして《血糖値スパイク》を繰り返すことで、日々のイライラを始め、脳や体の細胞を徐々に壊して、やがてMCI、人工透析、がんや脳梗塞といった病気までも引き起こしていく」と言います。20万人のビジネスパーソンを診てきた経験からの警鐘です。

 

「老化や病気のリスクを解消するためには、ミネラルウォーター以外の液体飲料はできるだけ避ける。缶コーヒーや野菜ジュースを毎日飲む習慣は止めるのが賢明だ」ということです。

 

ところが、液体は避けることができても、悩ましいのはごはんや麺といった主食の固体です。普段、ランチで食べているものの糖質量を下記の図でチェックしてみてください。

 

m584.jpg

■「ごはんや麺など固体は、液体と違って、消化に時間がかかるので血糖値の上昇が緩やかです。それでも、1食当たりの糖質量が40gを超えると《血糖値スパイク》を起こしてしまいます」

 

ごはん1膳、おにぎり2個、ざるそば1枚でも、40gを超えてしまいます。品種改良されて美味しくなった分だけ、糖質量が増えているのです。でも、ごはんや麺に比べて、魚や肉、卵には糖質量はほとんどありません。つまり、外食のランチは、例えば「牛ハンバーグ定食やとんかつ定食であれば、ごはんを半分以下にする」というのが良さそうです。

 

「血糖値に関して、健康診断は当てになりません。空腹時の血糖値やヘモグロビンA1c値を測定するだけで、食後の血糖値を調べないからです。そのため自分の体の中で《血糖値スパイク》が起きていることに気づけません。あなたもその1人かもしれません」

 

牧田医師の言葉を俄かに全て納得できないかもしれませんが、私達の健康は私達が気づかないで壊していることも多いということは理解する必要がありそうです。

 

(その4に続く)